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2分でわかる!「ブランド・プロデュース思考」要約

弊社代表の工藤は2022年9月、企業が包括的にブランディングを推し進めるためのマインドやノウハウを網羅した「ブランド・プロデュース思考」(発行元:株式会社クロスメディア・パブリッシング)を発行しました。

 本書は、顧客との接点で一貫したプロミスを伝え続けるために、ブランドを俯瞰し、社内外の関係者と連携しながら、ブランディングを「プロデュース」していく思考を企業が持つ必要性を訴えた本です。

 本記事では、「はじめに」を含む重要な箇所をピックアップし、弊社のブランディングノウハウの要点をお伝えします。

はじめに

 そもそも「ブランドがある」とは、自社と顧客の間にプロミス(約束)があり、自社の商品やサービスの力で顧客により良い未来をお届けできる状態です。そして、PDCAによってさらに約束を重ねていくことで、ブランド価値を高めていくことを「ブランディング」と呼びます。

 また、ブランディングで伝えていくべき理念として、近年は「パーパス」が注目されています。パーパスは、企業が社会や顧客に対して、どのような「想い」で事業を展開しているか企業の存在理由を言語化したものです(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』

 昨今、日本企業で「ブランド」の持つ力が注目され始めていますが、日本企業はブランドを言葉で伝えるばかりで、見た目や顧客と接する人の声・表情といった五感で企業の価値を伝える点で一貫性に欠けています。経営層と現場、部署間で密接な連携が取れていないのが要因です。企業内での連携が取れていない状況で求められるのが、全社を俯瞰し、各部署の連携を図ってブランディングを「プロデュース」する思考です。

 特に経営者がプロデュース思考を持つことで、企業がコロナウイルス流行によるダメージや人口減少といった苦境を乗り越えられるでしょう。

ブランディングにプロデュース思考が必要な理由

なぜブランディングにプロデュース思考が必要なのか

 ブランディングにプロデュース思考が必要な理由は、全体を統括するプロデュース思考が欠けていると、プロダクト側とマーケティング側で戦略の乖離が生じるなど、ブランディングの一貫性が崩れてしまうためです。

 ブランドに関する意思決定を部署横断で統括するブランド・プロデューサーの設置も有効ですが、経営者こそがブランド・プロデューサーを担うのが最も効果的です。経営者がプロデュース思考を持つことで、実務や意思決定、その後の戦略の落とし込みがスムーズになるでしょう。

結果を出すブランディングには一貫性が欠かせない

 先も述べたように、結果を出すブランディングには、一貫性が欠かせません。一貫性のない情報発信を継続的に行えば、違和感が積み重なるとともに、それまで寄せていた信頼が薄れる結果、企業のブランドイメージが低下していくためです。

 また、ブランディングに一貫性が必要なのは、消費者、特に若い世代が商品やサービスに意味を求めているためです。消費者は意味に共感することで、メッセージを発信するブランドを支持する傾向が強くなっています。

企業のブランドは何で伝わるのか

 企業のブランドは、ブランドを象徴するブランドエクイティによって伝わります。ブランドエクイティは、ロゴやアイコン、色、音、匂い、形、キャッチコピーなどが該当します。

 このようにブランドは言葉だけでなく、ロゴやアイコン、音といった心理的印象によって伝わります。言葉と心理的印象の両方でブランドを伝えることで、消費者は、心的情景の一端にブランドや商品の存在を刻み込めるでしょう。

ブランドの「あるべき姿」を言語化する

ブランドの言語化がブランディングに一貫性をもたらす

 自社の理念や考え方、想いに基づいてブランドのあるべき姿を言語化した「ブランド・アイデンティティ(BI)が、ブランディングに一貫性をもたらします。

 ブランドに基づいて、企業の構成要素ごとにBIを言語化することで、製作やマーケティング、CRM活動といったあらゆる作業が、部署や人によってブレたり、迷ったりすることがなくなります(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』 

 ブランドをブレなく伝えることで、ブランドのメッセージが消費者に届き、共感され、口コミなどで波及し、ファンや売上が拡大していくでしょう。

考えるべきブランドの「プロセス」とは

 言語化の前に企業が考えるべきなのは、プロミス(約束)です。プロミスは、「自分たちが企業として、お客様や社会に対して何を実行するのか、するべきか」といった想いを指します。

 プロミスは競合他社を見ず、また社会からの評価などを気にせずに、顧客と向き合い、ある程度主観で考えましょう。 

プロミスを起点に、メッセージとイメージを描く

 プロミスが定義できたら、それをメッセージとイメージに落とし込み、言葉と心理的印象で伝えていきましょう。

 例えば、アメリカのファッションブランド「Supreme」は反体制的な広告や思想といったプロミスをメッセージや商品イメージに落とし込むことにより、消費者に対して唯一無二のブランド体験を提供しています。

 このようなメッセージやイメージ発信を経てたどり着くゴールは、独自のブランド体験の構築を可能にします。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』 

独自のブランド体験の構築によって、顧客は企業固有の情緒的価値を感じられるようになるでしょう。

BIは社内外で共有する

 BIは社内外で共有することが重要です。

 社内に向けたブランディングは、従業員に対して理念や目標を周知徹底するインナーブランディングと呼びます。インナーブランディングにより、社員が同じ思考、同じ行動を取れ、顧客に対して均一化したブランド体験を提供できるでしょう。また、インナーブランディングはフルフィルメント担当部署を筆頭とする社員のみならず、顧客と接する、現場のアルバイトの人たちに向けても必要です。

 さらに、BIの共有は、広告代理店やコンタクトセンターといったパートナー企業にも向けても実施しましょう。

ブランドを伝えて新規顧客を獲得する

マーケティングにブランディングを導入することで、新規顧客を獲得できる

 企業はBIをマーケティングにも踏襲することで、多くの人にブランドが届きやすくなり、新規顧客の獲得ができます。さらに、マーケティングによって新規顧客を増やすことは、ロイヤル顧客の育成につながるでしょう。

 BIとマーケティングとの一貫性の保持は、顧客獲得のみならず、ブランドの価値を中長期的に保つ上でも有効に働くでしょう。

マーケティングの目的を決める

 新規顧客の獲得につながるマーケティングは、大きく分けて、「フィジカル・アベイラビリティ」と「メンタル・アベイラビリティ」の2種類があります。

 フィジカル・アベイラビリティは物質的な買いやすさを意味します。実店舗やSNSでの露出により、この機能を高めると、顧客とのタッチポイントが増え、顧客が手軽に商品・サービスを購入できるようになるでしょう。フィジカル・アベイラビリティは、とりわけ新興企業で向上が求められます。

 メンタル・アベイラビリティは、ある特定の物がほしいと思った顧客の脳内に、自社商品が思い浮かぶ状況です。メンタル・アビリティを伸ばすためには、人々の記憶に自社の存在や意義が印象付けられるマーケティング戦略が必要です。歴史ある企業は、このメンタル・アベイラビリティを狙うとよいでしょう。

マーケティング施策を構成するクリエイティブとプランニング

 マーケティング施策は大別すると、クリエイティブとプラニングで構成されます。

 クリエイティブは主に広告のことを指します。自社の価値に合った広告を考えていく際、その広告をお客様がどのように感じるかという視点を持つことが重要です。

 さらに、広告は、自社だけの強みや価値が何かを踏まえた上で、「実利価値」、「感性価値」、「感情価値」の3つのどの価値を伝えられるかを考えましょう(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』 

 プラニングは、ブランドが伴うクリエイティブをどうやって伝えるか、伝達の手法を考えることです。プランニングには、動画広告マーケティングなど多様な方法がありますが、感情タイプや思考タイプなど、どのタイプの人に届けるかも事前にプランニングしておくとよいでしょう。

 これらのマーケティング施策を実行する上でも、フォントやイメージカラーを統一したり、統一のメッセージを発信したりと、一貫性を保つことが重要です。

ブランドの力でリピート顧客を創出する

なぜリピート顧客を創出する必要があるのか

 新規顧客に加え、ブランディングでリピート顧客を創出する必要がある理由は、リピート顧客が増えなければ、ブランドが顧客に伝わっていると言えないためです。

 新規顧客をどれだけ多く獲得しても、初回の購入だけで終わってしまった場合、損益計算で企業が赤字に陥ります。一方で、リピート購入は、新規獲得コストがかからないため、リピート数が多いほど、利益率増に直結します。

リピート顧客を増やす上で重要なCRM活動

 リピート顧客を増やす上ではCRM(顧客関係管理)活動が重要です。CRM活動は、リピート購入の理由を分析し、分析結果をもとにしてどのような施策を実行すれば良いかを考えることを指します。

 CRM活動はツールを用いたデータ分析に焦点があたりがちですが、本質となるのは、ブランドのプロミスやBIを適切に伝えていくことです。企業はCRM活動により、状況や段階に応じた伝え方や、伝える内容を考えるとともに、ブランディングにつなげることで、リピート顧客を創出できるでしょう。

適切なタイミングで適切なコンテンツを届ける

 CRM活動で重要なのは、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理的プロセス「ファネル」を見極めながら、「どのタイミングで」「どんなコンテンツを」「どのチャネルで」届けるかを考えることです。

 このうち、コンテンツに関しては、あらゆるものコンテンツになります。具体例には、会社の歴史や商品開発ストーリー、受賞歴などの第三者評価がコンテンツに当たります(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』 

 また、適切なタイミングやコンテンツを考える際は、初回購入者と複数回購入者で施策を分けることが重要です。前者の人には、商品の価値を感じてもらうための「初期CRM」、後者の人には長く使い続けてもらうための「継続CRM」を実施していきます。

 チャネルとは、メールやLINE、電話といったコンテンツの伝達手段を意味します。チャネルを選択する際は、データ収集できるものを選ぶと良いでしょう(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』

データから顧客を分析する

 CRM活動のPDCAサイクルから抽出したデータは、次なる戦略の設計を見直すため、分析を実施しましょう。データ分析は、大きく「定量分析」と「定性分析」の2つです。

 定量分析は、購入の金額や回数、頻度といった数値化されたデータをもとに行うデータ分析です。対して、定性分析はアンケートの自由回答内容や商品へのレビューといった数値化できないデータを用いた分析を指します。

 定量分析の代表例には、最新購買日と累計購買回数、累計購買金額の3つの指標を用い、「優良顧客」「通常顧客」など、顧客を性質別に分類する「RFM分析」があります。RFM分析により、顧客ごとに最適化したCRM施策の実施が可能です(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』

 定性分析では、アンケートの内容に応じて、顧客をセグメント化しましょう。セグメント化した後は、各セグメントのボリュームを把握するとともに、各セグメントの特徴を把握します。その結果を受けて、最も好意的なセグメントに他のセグメントから移動させる施策を検討しましょう(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』

 なお、適切なセグメント化には、アンケートで、年齢や性別、職業といったデモグラフィックなデータと、購買者の習慣や趣味、嗜好といったサイコグラフィックなデータを判別できる項目を設けるのが有効です。

データ分析の結果を受けてPDCAを回していく

 データ分析で浮かび上がった事実をもとに、改善のためのアクションを回します(下図)。

引用:工藤一朗『ブランド・プロデュース思考』

 具体的なアクションに上がるのが、ペルソナの見直しです。当初の仮説として立てていたペルソナと、実際に顧客となっている人たちの間のズレは、主に定性調査で判明します。

 また、顧客分析の結果から、広告、DM、LINEといった顧客アプローチのチャネルやツールを見直しましょう。さらに、あらゆる分析結果をもとに、オファー(特典)など、顧客に届いている「コンテンツ」を見直すことも重要です。 

CRM施策のPDCAで目指すべきはLTVの向上

 CRM施策のPDCAで目指すべきは、LTVの向上です。LTVの改善により、影響のある数値からKPIとして設定し、優先して改善していきます。

 多くの場合、LTVに影響するのは、F2転換率(2回目に購入してくれる顧客の割合)です。さまざまなCRM施策を検討、実施し、このF2転換率が改善したかどうかをチェックするのは、優先順位が高いといえるでしょう。また、休眠顧客の復活に向けた施策の実施も重要です。

 最後にABテストや顧客分析の結果は、新規顧客獲得のマーケティングチームを含めて社内で共有し、LTV向上のために各部署が連携してPDCAを回していきましょう。部署の壁を越え、矛盾や違和感のない施策を実行していくことは、まさに「ブランド・プロデュース思考」と言えます。

まとめ

 ブランド価値を上げるためには、あえてお金を使っていく。非効率でもブランディングを実施していく。その意識が重要です。その姿勢で取り組むことで、顧客の心をつかみ、LTVは上がっていきます。

また、顧客に一貫性のあるブランド体験をしてもらい、自社を愛してもらうためには、全社を俯瞰した立場で、ブランドをプロデュースしていく思考が必要です。経営者が中心となってブランド・プロデュース思考を発揮することで、企業はブランドを軸に1つにまとまっていくでしょう。


いかがでしたでしょうか?ご興味をおもちいただけた様であれば全編通じてお読みいただければ幸いです。

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