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コールセンターの応答率は設定次第で変動する!KPI絶対王者「応答率」のマジックについて~200社の運用実績から語る③

応答率は変動する!?

応答率とは「鳴った電話(以下、「呼」)」のうち、「何件応答できたか」を計るものとしてコールセンターの最重要のKPIとなっています。鳴った呼の数が分母、応答した呼の数が分子となり応答率は算出されます。

100件電話が鳴って、100件応答すれば応答率は100%となります。90件応答すれば、90%となります。誰が計算しても、どのように計算しても同じ率が出てくると絶対的な信頼を寄せている指標だと感じておられる方が多いと思います。

そのKPI絶対王者の応答率は実は設定次第で率が変わる、という話を今日は書きます。

そもそも応答率とは

コールセンターの運用に携わられている方は日々応答率がどうなっているのか気にされていると思います。なぜならば、応答しなければ何も始まらないからです。

お客様のニーズに応えるためには何よりもまずは受話器をあげなければ始まりません。応答できないということは、時に機会損失になり、時にCS(顧客満足)の低下につながります。

それゆえに応答率という指標はコールセンターにおいては最も重要なKPIとなっています。それが設定次第で変わってしまう、ということについて紐解いていきます。

着信数が変動する不思議

結論からお伝えすると、応答率を算出する際の分母になっている『着信数』が回線の設定によって変わってしまうことがあるのです。正確に言うと、PBX側が「呼」として検知できる数が回線の設定によって変わってくる。ということです。設定次第で分母が変われば、当然応答率もそれによって変わってしまいます。

※PBX:電話交換機。簡単に言うとコールセンターにかかってきた電話を各電話機に着信させる機器(参考:下図)

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着信件数が変動するとはどういうことか

PBXには「何件まで同時に着信させるのか」を設定する機能があります。電話の量とコールセンターのキャパシティのバランスを取りながら、何件まで同時着信させるかをコントロールする機能です。

この同時着信数の設定によってはPBX上で検知しない呼が発生します。

例えば、通信キャリアのフリーダイヤルの同時着信数を4回線、PBXの同時着信数を3回線に設定しているとします。対応するコミュニケーターを3名配置していると考えてください。そのような環境下で電話が4本同時に鳴った場合、下の図のようなことが起こります。

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フリーダイヤル側は4本の電話が鳴っていることを検知し、PBXに呼を流します。PBXは同時着信数が3回線に設定されているので、3本しか呼を受け取ることができず、1本(Dさんの呼)は弾かれてしまいます。

こんな状況が発生したときの応答率は何%になるかお分かりでしょうか。

答えは「応答率100%」です。不思議ですよね。電話を架けてこられたお客様は4名います。その内3本しか応答していないので応答率は3本/4本=75%と普通は思いますよね?

ですが、コールセンター側が出すPBXのレポート上では着信3本、応答3本となり、応答率は100%となります。

同時着信数の設定を4本にしていれば着信数は4本、応答数は3本で応答率は75%、同時着信数の設定を3本にしていれば着信数は3本、応答数は3本で応答率は100%になるのです。

4本電話が架かってきて、3本しか応答できていないのに、応答率が100%となる。これが応答率のマジックです。

参考:用語紹介

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4本目の電話を対応するためには

前述したDさんの電話を応答するためには4回線開ければいい!ということになりますが、その場合どんなことが想定されるか考えてみます。

すでにAさん、Bさん、Cさんの対応をしているので、4回線開放したところでコールセンターの3名のコミュニケーターはDさんの電話はすぐには対応できません。その場合Dさんの電話はPBXに入り、待ち呼として滞留します。(下図のような状況になります)

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すぐにDさんの対応はできませんが、3回線しか開けていない以前の状態とは明らかに違うことがあります。それは解放3回線の場合はDさんの電話を応答できる可能性は0%ですが、解放4回線であれば、Dさんがガイダンスを聞きながらお待ちいただければ応答できる可能性がでてくるということです。

その上で考えること

応答率はPBXの設定次第で変動する、ということを念頭において今どのような設定になっているのかを把握し、再度日報を眺めてみてください。見えてくるものが違うと思います。

総発呼が何件あるのか、PBXが何回線開放になっていて、PBXに何件着信したのか、その内何件を何名体制で応答ができていて応答率が何%なのか、をしっかりと見てください。それが「応答率」をKPIとして追いかけることの本当の意味です。

その上で応答率に課題があると思った時に初めてどうすれば改善できるのかを考えます。コールセンターに「応答率を上げるために、とにかく多くの電話を対応してほしい」と言うだけが施策ではない、ということです。

回線設定は適正か、呼の波動が日々どういうトレンドを形成しているのか、人の配置は適正か、これらを総合的に把握して施策を立てることがより多くの電話に応答するために必要なことだと言えるでしょう。

回線数の適正を計るためにはコールセンター側の人員体制や着信の集中度合いや集中する頻度などその他にも考慮すべき要素は多々あります。お困りのことがあれば一度ライフェックスにお問い合わせください。

小話

10年ほど前はTVショッピングが軒並み好調な時代でした。その当時私はある通販会社のコールセンターの運用マネージャーをしていたのですが、その業務の解放回線数は190回線でした。

TVの画面にフリーダイヤルが表示されると共に、一斉に電話が鳴りだす景色は圧巻で、毎日がお祭り状態でした。

その日の商材の予測数に合わせて配置人数を増減させるものの、最大でも100名程度の配置が限界でした。(物理的な場所もないですし)

ヒット商品が放送される日は当たり前のように190回線すべてが一気に埋まります。100名で対応しても待ち呼は常に90つきます。90名が常にお待ちの状態です。191人以上同時に架けてこられているのは明らかでした。

ですが、お祭り会場は一つだけではありません。その放送30分後、別の会社のTVショッピングのお祭りが始まります。限られたリソースを各社の呼量を見ながら割り振る毎日でした。

こちらの電話が収まってくると、もう一方のお祭り会場に応援を送り、こちらの電話が増えればまた戻してもらう、なんてことを日々、分単位で配置を変え対応してました。

時に日に数千件の電話を対応し、限られたリソースの中で、瞬間瞬間の判断を行い、KPIである応答率90%を目指して全員で奮闘していたのを昨日のことのように思い出します。非常に楽しい日々でした。

その時の事業者側の担当者とライフェックスで今一緒に働いています。何が起こるかわからないのが人生。どれだけ鳴るのかわからないのがコールセンター。どちらも楽しいですね。

この記事の編集メンバー
高井 真吾(タカイ シンゴ)
コールセンター運用経験16年。立ち上げ及び運用実績約200社。通信販売、D2C、会員制ホテル、公共事業など様々な業務の支援実績。
・趣味:映画鑑賞・ゴルフ(まだ初めて1年)・ドライブ・立ち上げ支援
・姿勢:仕事ではなく、志事をする。
・モットー:笑顔・感謝・機知・機転



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